"  皆が歓声を挙げ、ククルが走ってツァイに抱きつく。
俺は隣の持ち場だったルークと、軽く手を打ち合せた。

これで最終戦はうち、Bクラスとネカの居るAクラス。
Aクラスが1回戦のような手を使 投資工具 としたら、ツァイとネカの勝負――と、言えなくもない。

ただあのネカが、まったく同じ手を使うとは考え辛いが。

最終戦のスタートラインは、俺たちはさっきと同じ南側、相手は1回戦では退場口だった北側となる。
向かい合って並んだ俺たちの間には、再び入れ替えられた魔力探知器の絨毯。
両陣睨み合う中、アナウンスが響き渡る。

「それでは最終戦、始め!」

俺たちの作戦は変わらない。
というよりは、変えられないと言うのが正しい。
この土壇場で違う案が出てくるわけもなく、練習してない案をいきなり採用するのも危険だ。
ツァイのあの目と足ならまた勝てそうな気もするが、種の割れた手品は弱い。
その辺りは、若干賭けだ。

そういうわけで同じ位置についた俺たちだったが、Aクラスが此処で動いた。
ネカが中央、ツァイとククルのすぐ傍に陣取ったのは1回戦と同じだが、その他の生徒たちもまた、俺たちBクラスの生徒のすぐ傍に立ち位置を取ったのだ。
つまり、人員が違うだけで、2クラスが同じ位置取りをしたわけだ。

「へえ」
「や。悪いね」

俺の位置に来たのは偶然か故意か、見知った実行委員の生徒。
ネカの片割れで、名前はシルシ・ルーウェン。
もう競技は始まっている。
そんなに長く話す時間はないため、肩を竦めて終わらせた。

ネカと他の生徒の配置を見て、一瞬眉を寄せたツァイが片手を挙げる。
俺の使う魔法はさっきと同じ。
ヴェール・トスを唱えて、次の合図を待つ。
Bクラス各生徒の隣に立つAクラスはまだ沈黙を保ち、ネカからも魔力行使は感じられない。

意を決したツァイが、右手を振り下ろした。

地面が瞬く間に青く染まって行くのを見て、ネカが魔力を練る。
両クラスの生徒たちは、目を皿の様にして「宝玉」を探し始めた。

ツァイと比べてどうだかはわからないが、俺も目はいい。
自分が割り振られた領域の端に白い球を見止め、打合せ通り名を呼んだ。

「ツァイ。こっち」

さっきのハルは思わず叫んだが、ツァイは獣人だ。
目も脚も、そして耳も、人間とは出来が違う。

多分聞こえたのは、俺の隣のシルシと、ツァイだけ。"